日本でも利上げ
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まずは地銀のビジネスモデルから考えて行きます。
銀行のビジネスモデルは企業や家計から預金を集めて、その集めた預金を資金を必要とする企業や家計に貸し出して利益を得て、この短期に集めた資金と長期に運用する長短金利差による利鞘(りざや)を稼ぐビジネスモデルが基本となります。
利上げしたアメリカの事例から考えると
その為、長短金利差が逆転、いわゆる逆イールドの状態に陥ると銀行は利鞘が稼げなくなるので貸し渋りや貸し剥がしとなり、信用収縮となって行きリセッション入りすると言われています。
しかし実際には、いわゆる逆イールドとは10年債と2年債との長短金利差逆転を指した言葉ですが、銀行の平均的な調達利回りは2年債とさ連動せず、3ヶ月債との連動となるので、いわゆる逆イールドがリセッションに陥るという因果関係は存在せず、FRBのパウエル議長も記者会見で問われた際に鼻で笑いながら一蹴し、そんなものは無意味との趣旨でこき下ろしていました。
逆イールドで因果関係があるのは10年債と2年債ではなく10年債と3ヶ月債との長短金利差逆転となり、パウエル議長もいわゆる逆イールドを意味する10年債と2年債との長短金利差逆転は無意味だが、10年債と3ヶ月債との長短金利差逆転には注視して行くと同じ記者会見で見解を示しています。(確か最初は2018年だったと思います。その後2021年にも同様な見解を示しています)
そして今回は10年債と3ヶ月債との長短金利差逆転も起きているのですが
1、企業も家計も対GDP比で債務比率が歴史的に最も低い水準なので過剰債務を抱えてはいないことから、そもそも貸し渋りや貸し剥がしを受ける対象とはならない
2、企業も家計も大半の借り入れは低金利のタイミングで固定金利に切り替えていて、金利上昇による利払い負担の増加とはならない
3、アメリカの銀行は企業や家計への貸し出しをリーマンショック以降は極めて抑制して来たので預金に対する貸し出しの比率を意味する預貸率は適正な水準とされる70%を下回り62%まで低下しており、そもそも過少貸し出しの状態なので貸し渋りな貸し剥がしは起きない(預貸率70%が適正という根拠は日本のとある有力地銀で支店単位で実験し得られたデータです)
4、アメリカの銀行は過剰貯蓄が積み上がり預金を集める必要は無かったことから調達コストとなる預金金利を引き上げる必要が無い
5、銀行は貸し出しを増やさずとも準備預金に預けたり短期国債を買えば利回りを得られるので貸し出しを増やさずとも安定した利回りを得られる
6、実質金利が潜在成長率を超えることは、ほとんどの時期で無かったので経済に対して金融が引き締まることはなく、この状態で過去にリセッション入りした事例はなく、経済に対して金融が引き締まる状態にはならなかったことから、そもそもリセッションは起き得ない
といった理由から10年債と3ヶ月との長短金利差逆転でもリセッション入りはしなかった訳です。
で話を日本の地銀に戻します。
銀行の基本的なビジネスモデルは企業や家計から短期の預金を集めて資金を必要とする企業や家計に長期に貸し出して長短金利差から利鞘を得て行くビジネスモデルが基本となります。
ところが日本の地銀は、このビジネスモデルが基本ではなく実態としては手数料ビジネスとなっているのです。
なぜか
日本の地銀は信金や信組も同様ですが貸し出しでは金利が低すぎて利益を得られていないのです。
企業向け貸し出しから考えて行きます。
地銀で企業向け貸し出しで1000万円の新規貸し出しを月に5件獲得出来たら優秀な融資担当者となります。
ところが調達コストとの差となる利鞘は1%程度にしかならないので1000万円の融資を新規に獲得出来ても年間で利鞘は10万円程度にしかならず、月に5件も新規に融資を獲得出来る優秀な融資担当者でも月に50万円しか稼げないのです。
優秀な融資担当者にかかる人件費は社会保障や福利厚生費まで含めると月に150万円以上は必要となるので差し引きで100万円の赤字となるのです。
つまり優秀な融資担当者が頑張れば頑張るほど、優秀な融資担当者が増えれば増えるほど地銀の赤字は増えて行く構図なのです。
この構図を理解している支店長は非常に少なく、ゆえに、そのような認識レベルの支店長だと経営者としての認識に欠けるので頭取争いには加われないのですが、中小企業向けの貸し出しは全く儲からないビジネスモデルとなっているのが実態なのです。
だったら何故、中小企業向けに貸し出すのか?
と問い掛けると
それは銀行としての責務だから
という趣旨の答えが帰って来ますが、そのくらい地銀のビジネスモデルは脆弱だし、利鞘が稼げないビジネスモデルとなっているのです。
じゃ地銀や信金、信金は、どのようなビジネスモデルで利益を得ているのか?
これはひと言で言えば手数料ビジネスとなります。
企業や家計は銀行に口座を持つと
1、電気代の引き落とし
2、ガス代の引き落とし
3、水道料金の引き落とし
4、スマホ料金の引き落とし(家計)
5、リース料の引き落とし(企業)
6、住宅ローンの引き落とし(家計)
7、建物のローンの引き落とし(企業)
8、自動車ローンの引き落とし(家計)
9、塾代の引き落とし(家計)
10、賃金の振り込み
11、その他引き落とし
などたくさんの引き落としが発生し銀行は毎月、毎月、濡れ手で粟で手数料が入り続けます。
この手数料ビジネスの管理コストは低いので地銀や信金、信金は、この手数料ビジネスを主として利益の源泉としています。
その為、住宅ローンは貸し倒れ比率が少ないのでタダみたいな低金利で貸して、住宅ローンを獲得出来ればあらゆる引き落としが集中し毎月安定して手数料が入るので住宅ローン獲得に遮二無二に猪突猛進して行く訳です。
このような状態なので利上げされて貸し出し金利が上がれば地銀も利鞘を稼げるようにはなって行く期待はあるのですが、その金利を上げる対象となるのは中小企業となるので、金利を上げると中小企業は赤字企業の比率が7割くらいあるので貸し倒れの比率が上がり貸倒引当金という費用が増えて行くことから、地銀で利益を増やして行けるのは少数になるのではと見ています。
また銀行にとっては預金は負債となり平たく言えば借金となるので利上げされると預金金利は上がることから銀行から見ると借金の利払いが増えることを意味することから、利上げにより銀行が儲かるとは限らない訳です。
利上げされると銀行から見ると
1、貸し出し金利は上がり売上は増える
2、借金となる預金金利は上がるので利払いが増えて費用が増える
3、貸倒引当金が増えるので費用が増える
結局は、このバランスが地銀の競争力により大きく異なることから競争力のある地銀は利上げによる金利上昇により利益を増やせる可能性はありますが、多くの地銀は利益を増やせず、株価上昇には期待出来ないのではと見ています。
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